本社ビルの中央はアトリウム、ガラス張りの天井から日が差し込みます。一階で仕事をしている秘書嬢の中には、日焼けを怖れ、衝立の上にさらに自製の衝立を立てて日を遮っております。大きな大きなアトリウム下の床、大きな花壇が設えているのです。一週間ごとに鉢植えの花は入れ替えられ、色とりどり、目を和ませております。一週間ごとというのは、四六時中手入れされている感覚なのです。オバサンやオジサンは、鉢の入れ替えに二日をかけ、さらに一日見栄えのよいよう、向きを変えたり場所を入れ替えたり、それはそれは難儀に思えます。
この鉢植え、全部で三百はくだらないでしょう。それを一週間ごとに変えていくのですから、相当の出費に見えます。さてその花なのですが、今日、秘書嬢二人が、私を誘い、仕事の合間に抜け出し、秘密の花園へと案内してくれました。高い樹木に囲まれた、手入れの行き届いた庭先の小道を木々の間をくぐり抜けると、隣接した広大な土地一面に鉢植えが並べられておりました。一人のおじさん、一つ一つ鉢植えを見て回っております。手間のかかるものです、生き物は。まあ生き物といってもご婦人に手を出すわけではないものですから、和やかに眺めておりました。
それにしても庭園に手間をかけることにお金を惜しまない、手間暇かかる鉢植えを選ぶ。日本の本社ビルでは、できるだけ手間暇かからない植栽を選びますが、ここは違います。人件費が安い国柄とはいえ、そう簡単にまねできるものではありません。よき心構えであります。
[ 写真: 本社ビルの一階、中央はかくのごとく鉢植えで埋められている。一階にいると目につきにくいものの、二階三階ではかくのごとく眺められる。今回は白い花でこの会社のシンボルマーク、白鷺を表しておりました。右の写真は鉢植えを送り込む秘密の花園、色とりどり、冬でもここはかくのごとくであります。 ]
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