Monday, February 5, 2007

[廈門・243日] 帰郷

私には帰郷の経験がありません。生まれも育ちも東京。小学生の頃、夏休みは何とも切ないひと月でした。仲間たちには田舎というものがあって、小川で泳いだり、魚をすくったり、雑木林で遊んだり、お墓で肝試しをしたり・・・。夏休みが終わると何とも羨ましい話を聞かされたものです。私はひたすらキンダーブックという絵本のなかで田舎というものを疑似体験するしか他に手だてはありませんでした。

今振り返ってみると、母方のお婆ちゃんは新潟のド田舎の出だったそうで、父方は茨城の土浦とのこと。夏休みはただただ母親の我が儘で、田舎に出向かなかっただけだったようです。とはいえ、そんな羨望の田園生活を、ここ六年間、千葉の勝間という集落の、半世紀はたっているだろうボロ農家に寝起きしたのは、子供の頃のあこがれを実現させたということになります。ここ廈門の生活がなかったら、今でも畑で夏野菜の仕込みをしていたかもしれません。

中国には三っの長期休暇というのがあります。メーデーの、国慶節の、そして旧正月。なかでも旧正月は特別なようで、旧正月は農暦ですから、農業国の生活習慣から来ているのでしょう、出稼ぎの人たちがみな里に戻る。大移動が始まるわけです。十三億人を抱える中国、十分の一の人たちが移動したとしても、日本人すべてが動きまわることになる勘定です。

交通手段が整備され、高速道路を高速バスが群れをなして移動する。それでも切符を手にするのは難しいようで、我が老師も四苦八苦したらしい。本来、私の会社は二月十八日、つまり春節の日から休みになるところを、彼女、十六日に早々消えることにしました。当日の切符を購入できなかったからです。それでも愛する家族との再会できるという帰郷、私にはなかった帰郷です。もししばらく廈門に滞在することになれば、日本へは帰郷ということになるのでしょうか。

[ 写真: 僅か二時間足らずのバスの切符。74元という金額は彼らには高価に映っている。 ]

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