Monday, May 28, 2007

[廈門・356日] 危険なご婦人

もう一人の老頭子、奥さんが子供の元、カナダへと去って久しい。家に戻っても、ガランとした部屋に一人、退屈になるのだろう、私をしばしば引っ張り出す。昨日曜日早朝、携帯が鳴り、山登りしてきたところだ、コーヒーショップに出てこいという。朝早くからなんと言うことだ、店の若い子と雑談でもしたいのか、まあいいか、と出かけた。

店では老頭子がご婦人とサンドイッチを口にしている。見るとホテルのボスの秘書である。ひと月ほど前台湾から新任したばかり、単身赴任の年の頃五十代半ばというところ。仕事場での彼女、声に艶があり、顔立ちもなかなか色っぽい。どうも二人で私のマンションの裏山から下りてきたあとらしい。おっとあたしは遠慮しまっせといったものの、結局珈琲を口にした。

店から出て、あたしのマンションの隣、高級ホテル内部を見学したいと秘書嬢、健身中心であれこれ話を聞き出していた。一通り見学を終え、外に出ると空模様が怪しい。稲光と雨粒だ。二人と別れ、足早に家に戻った。

しばらくして、そう、小一時間ぐらいか、携帯が鳴った。老頭子からだ。緊迫した声をしている。矢継ぎ早に質問を浴びせかける。さっきのご婦人に興味があるか、悪くないだろう、紹介するぞ、小姑娘でないと駄目か、なぞ意味不明なことを問いつめてくる。何をあわてふためいているのか、要領を得ないまま返事をしていると、我が友人はこういうとき即決してご婦人のお相手をするぞ、と男気を試しにかける・・・。

ここからは推測の話である、誤解の無いように。後日事実を確認するとして、まあこういうことだったのではないか、と。私と別れたお二人、タクシーをその場で拾わなかったとすると、雨にたたられたことになっているはずだ。ひとのいい老頭子は、家で休んでいけとか、傘を貸しますとか、場合によってはシャワーを使わせることもあり得る。私と別れて一時間、この一時間は危険な時間だったらしい。

廈門は雨期に入り、しばしば突然のスコールに遭遇する。そのスコールがうんだ小さなお話。

[ 写真: 本社ビルの回廊で見つけた竹箒。庭師が手作りしたものらしい。懐かしい。勝間を思い出す。雑木林の笹藪から、手頃な長さに切り取り、針金で束ねで竹に縛り付けてつくったものだ。今は昔である。 ]

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