こちらに来た当初、私に秘書がついた。一見して田舎出の女の子という印象だった。秘書とは名ばかりで、業務日誌すらつくれない。雑用係といってよかった。ある時、何かの拍子に彼女の対応に強く心を打たれた。部屋に通し、将来何をしていきたいのか聞いてみた。返事は当たり障りのない、要領を得ないものだった。それでも何か支援してあげようではないかと考えてみた。
その手始めに中国語の教師になってもらうことにした。週三日、一日二時間、一回のレッスン五十元、月六百元が彼女の手元にはいる勘定だ。彼女の役割は的を得て、まさに天職ではないかというくらい、教師の役割をこなしてくれた。教え方だけでなく、発音の響きもよかった。おかげで私の中国語は日ごとに進歩したと思っている。
しかし朝昼晩と一緒していると、どちらも甘えが出てくるもので、私が教科書を読んでいる脇でテレビを見るようになったり、雑談に花を咲かせたり、私は次第に授業に集中できなくなってきた。それになんといっても若すぎた。話題も友達の話、着るものの話し、美味しい店の話と、私には軽すぎた。おしゃべり好きは私を疲れさせもした。
私が本社ビルに移ったあと、彼女は元の職場に留まり、しばらくは授業を続けてみたものの、時にイライラが募った私は、彼女を叱ったりするようになり、疎ましく感じられるようになった。それでもついてくる彼女、今年の春節を前に、以後授業を続けるのをやめると告げた。
私が去った後、仕事場では手にする仕事もほとんどなく、暇をもてあましていた様子。インターネットのQQで雑談をして時間をこなすことが多くなったようだ。同時に仕事場でリストラ話が起こり、そんなことになる前にホテル部門への転職を勧めた。昨日がその第一日目、電話で「・・・デスクにパソコンも電話もない・・・」、と悲しげに告げてきた。今までが恵まれすぎていたのだと話をしたものの、私は胸が痛くなった。
[ 写真: かつて、活き活きとして私の部屋で家庭教師の最中に耳かきを使う元秘書。 ]
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