目覚ましは目の前で工事中の重機が動き出す音、早朝六時半だ。バルコニーに出て軽くからだじゅうの関節を動かす。いたるところの継ぎ目がボキボキと音をたてる。真下の工事現場は無視し、国際埠頭、港、そして対岸がどの位モヤっているかでその日の天気を予想する。今日は雲が厚かった。雨季なのだ。
週に一度、埠頭に豪華客船が停泊する。四段のアッパーデッキが魅力的に見える。機会があれば、のんびりとデッキ上から海原を眺めて過ごしてみたいものだ。
豪華客船が停泊した日の夕食を姐姉の家で御馳走になった。客船に話が及んだ際、乗ってみたいなーと口にすると、この船、台湾船籍の船らしい。香港を拠点に、アモイ・海南島をクルーズする、三泊四日の旅と聞いた。日本円で百万はするのでは……、なんと人民元二千円(日円約三万円)だという。まさか、アッパーデッキじゃないだろう、二千元ならすぐにでも乗ってみたくなる。
ここアモイで提案書を書き終え、翻訳も完了、あとは結果待ちの日々、時間は有り余っているはず、手持無沙汰のはず。
ある会食の席、毎日何をして過ごしていますか?の問いに、部屋から海を眺めていますと答えた。「看海的日子」ですか……と返事が返ってきた。。古い台湾の短編小説の題名だ。うる覚えなので正確さに欠けるが、たしか、船乗りの亭主が海に出て行ったきり戻らない、カミさんは毎日浜に出て海を眺めながら亭主の船が戻ってくるかと待ち続ける。むなしく時を過ごしている。映画にもなって、見たような気がするが遠い昔のこと、定かではない。ちょっとうらぶれた物悲しい話だった。
私はなにを待って海を眺めているのだろう。あてはない。そんな時だ、香港へ船の旅なぞどうだろうか。
[ MEMO: 高校時代の絵画の先生は船を描くのが好きだった。あたしも習って芝浦桟橋に出かけてはスケッチを重ねたものだ。 ]
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