Monday, May 19, 2008

[廈門] 見知らぬ愛国者

・現在午後二時二十八分。サイレンが鳴り響き、港の何十隻という大小なの船が霧笛を鳴らし始めた。テラスに出て黙祷する。

かなり前のこと、一年はたっていないが、真夜中に二三度ワンギリを受けたことがある。注意しなければと、ログから番号をアドレスに残しておいた。それからしばらくして夜中に再度その番号から電話がかかった。こちらの問いかけには一切答えず、ただただつたない英語で罵り続ける若い女性の声。そこでアドレスに名前を付けた。"Fucking Girl"。彼女と彼女達からは(わきでもう一人女性が加担していた)再度罵声を受ける。こちらもかなりきつい返事を返した。以降電話が鳴ることはなかった。

アタシのスカイプ・コンタクトリストには何人かの中国人女性が上がっている。ほとんどが日本語を勉強中です、よろしくお願いします、ということでアタシのところにやってくる。なかにILC(仮称)と名乗る女性がいた。初めに一度ぐらい挨拶をしたあとはお互い不義理をしていた。昨夜、その彼女からチャットが入った。お互いに自己紹介をし、どこに住み、何をしているのと型どおりにチャットは進んでいった。

何がきっかけでそうなったのかわからないが、突然に彼女、私は日本が大嫌いだ、家には日本のものなんか一つもない、中国製品が一番で・・・。私は愛国者です、聖火リレーで中国人を殴った日本の右翼をあなたは許せますか?日本の首相は靖国に参拝します、日本は中国で何人中国人を殺したと思いますか・・・云々。

はじめのうちは丁重に受け答えをしていたものの、どんどんエスカレートしていく。かなりカチンときたアタシ、「あなたは真の愛国者ではない、あなた達の領導(指導者)の考えを理解していない、あなたは単に人を罵っているだけだ。」と。彼女、意に介せずさらに続ける。これでは交流も糞もない。アタシはそれでも丁重に、そのような態度ではあなたと会話を続けることはできません、よろしいですね、と答える。そして彼女が執拗に迫る問いに答えず放置した。

スカイプフォンが鳴った。彼女からだ。アタシは受けないことにした。と、次に携帯が鳴る。画面には"Fucking Girl"とでていた。

スカイプの友ILCと携帯のFucking Girlを結びつけるものは何もないはずだ。一瞬背筋が寒くなった。アタシは電話を受けることにした。受けなければいつまでも追いかけてきそうだ。「誰?何?以前もアタシに電話入れたよね・・・」、「ない」「私ILC」。先ほど罵り続けていた彼女だ。「どうしてアタシの電話番号がわかったの、知る手だてないはずだろ」、彼女、「私もよくわからないんだけど、ああしてこうしてああやっていたら・・・」。要領を得ない上に何やらぐちゃぐちゃと話す。「酔っているのか?」、返事無し。

アタシのスカイプニックネームはburikineko、ただしプロフィールにはアルファベットで本名が登録されている。携帯の番号は掲載していない。Google CNでburikinekoを検索してみると、アタシのブログとHPが引っ掛かる。ここから漢字の本名は探せる。しかしそれ以外の手がかりはつかめない。彼女に「会ったことあるか?」に「ない、知らない」と答えている。たとえ携帯の番号がわかったとしても、スカイプ名からアタシを引きこむほど手の込んだことができるだろうか。話した限りではできそうにない。そこまで賢こそうにも思えない。そう感じた。

気になったのは、昔のFucking Girlと昨日の彼女と声の質が違うこと。昔はやたら若く跳ねるような声だった。昨日の彼女はだらだらと話し、嗄れ声で、アタシのことそっちのけで一人、日本のポップスを歌い続ける。彼女の電話先を確認してみることにした。

こちらではかなりの範囲までユーザー情報を絞ることができる。携帯からどのキャリアでどこの局でぐらいはウェッブで検索できる。電話を受ければ相手先が分かる。受信拒否ができないのだろう。探ってみるも番号を打ち間違えていると。確かに変な番号だ。どのような回線経路からやってくるのだろう。想像できない。

彼女の背景から数人の声が聞こえていた。仕事場かインターネットカフェか。彼女はホテルの服務員だと言っていた。手がかりは何か。皆目見当がつかない。どちらにしても偏狭な愛国者に捉まってしまったのは確かだ。

真夜中の迷惑電話、執拗な日本への反感にくらべ、携帯から聞こえてきた彼女の声には、どこか投げやりな感を受けた。アタシは不思議な夜を過ごしたことになった。

[ MEMO: こちらは執拗に投げ込まれるピンクチラシ。衝立に飾ってみた。おっと、今日は喪に服す日だった。ピンクチラシはないだろう、こちらの新聞もエンタテイメント系ウェッブだってモノクロだ、ということで写真差し替えました。チラシは後日にでも。 ]

いつもは男性陣を楽しませてくれていたサイトもこれこの通り、モノクロで喪に服している。カラーからモノクロへと対応の遅れたものは、このサイトのようにトップページを入れ替えるか、単純にアクセスできないよう閉じてしまった。

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