最近、とみにあたしと親密さを増している台湾老頭子、こちらに来てまもなく一年を迎える。はじめは何故か孤立していると感じたり、総経理だと威張る風情を見せていた。それも辣腕総経理に取って代わられ、ショボンとするわ、仕事が動かないわで、気持ちが追いつめられていた。彼に原因があるわけでなく、二人のボスの権力争いに巻き込まれたのだ。
今年、確か春節以降だったろうか、彼、居直った。ボスから能なしといわれ、台湾に戻れといわれ、彼は「ハイ」と答えたのだ。ボス、今すぐとはいわん、ということで、肝がすわった老頭子、ボスに左右されることなく、自分の考えで仕事を始めた。以降、おどおどとした素振りがなくなった。駄目なら駄目、できることしかできない。徐々に彼の仕事はボスに評価されるようになった。反面、反目の相手、元ボスは、そんな彼の、ボスに顔を向ける態度に腹を立て、始終罵るという。
能なしが何十人いても仕事にならん、十人で十分だ、老頭子はいい始めた。もともと元ボスが集めた人間、仕事もないのに現場事務所でぶらぶらしている。イヤ、ないわけではない、元ボスが仕事に集中しない、したくない仕事に手を出さない。結局何もすることがないのでぶらぶらしている。
人事権は権力者の手の内にある。かれはこれに挑戦し始めた。ケチなボスは彼に聞く。「何故こんなに大勢の人間がいるのだ、彼らは何をしているのだ」。老頭子はボスの一言を理由に、人員削減に取り組み始めた。
職員は毎年、労働契約を更新する。老頭子、どうやら役立たずの名前をボスに伝えたらしい。手始めに九人の職員、ボスの同意がなく、契約更新できず退職していった。他にも何人かは任意退職している。もし昔の、あたしの秘書がここにいたなら、確実に首になっていただろう。それを察知し、亭主に不倫の疑いをかけられた女性が拾い上げ、ホテルへと移動させたばかりだった。
老頭子、別に改革に取り組んだわけではない。自分の仕事をしやすくするために考え、それを実行しただけだ。結果、元ボスの配下にあった連中が去っていく。この出来事を元ボスはどう感じているのか。大企業にはそれなりの文化がある。この文化を変えるのは至難の業ではない。老頭子のように、居直ってこそ、少しづつだが、変わっていくのかもしれない。この様子を脇で見るあたしは、依然第三者であり続けている。あたしこそ明日がないのかもしれない。
[ 写真: 本当の夏空だ。澄んだ空、白い積乱雲、夏なのだ、廈門は。 ]
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