Wednesday, August 23, 2006

[廈門通信] 猥雑さと物乞いと

[廈門・77日目] 猥雑さと物乞いと
初めて廈門を訪れたときのこと。車に乗っていたときのこと。信号で止まっていると少年が近づき、車のガラスの隙間にカードを手際よく挿して去っていく。見てみると「タイ式マッサージはいかが?」といういささかいかがわしい内容だ。

しばらくして廈門に住居を定め、少しずつあたりの様子もわかるようになり、好きな珈琲が味わえるお店も探し当て、ちょくちょく出かけていった。私の住んでいる一角は廈門の高級住宅地。アパートからコーヒーショップまでの道の両側には高層アパートが並んでいる。広い歩道には背の低い並木が植えられ、この暑さがなければ絶好の散歩道となっている。

ある日、友人と珈琲を味あおうではないかとこの道を歩いていた。歩道に身なりの乱れた老婆が。我々に近づき、左手で右手を支えながら念仏を唱えるかのように何かをつぶやく。無視して歩き続けると、我々に触れるか触れないかの距離でいつまでも付いてくる。彼女だけではない。老人も。いつだったかコーヒーショップの湖畔が眺められる洒落たテラスでエスプレッソを味わっていた。杖をついた老人がテラス越しに物乞いに。しつっこい。去らない。店の人間も無視している。気分を壊された私は友人に向かって話しかける。「本来、中国にはこのような人間はいなかったよな!」。老人は杖を地面にたたきつけ、一言吐き捨てると去っていった。

夜にはさらに不思議な人間が加わる。薄暗い歩道を私の前を若い女性が歩いている。女性は私に気づき歩を緩める。私を不審に思っての行動かと思った。しばらくして、突然私の前に彼女の手が差し出された。あまりの唐突だったので、私は飛び上がった。「驚かすな!」というと、彼女、私の手に何枚かの名刺を握らせて去っていった。日本でもよく見かける女性を紹介するカードだ。カードにはどこかの国の女優の写真が。

これらの出来事の後、コーヒーショップに向かう道をかえた。

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