Saturday, March 3, 2007

[廈門・270日] 光の元宵節

昔、台湾、一ヶ月滞在しては戻り、また一ヶ月という生活をしていたときのこと。この帰国が面倒くさい、仕事疲れと飛行機疲れ。のんびり過ごすにはどうしたらいいか。旧正月を帰国せずに居残ることにした。台北の町から人影が消え、車が消え、実に安静な都会生活がおくれた。

ホテルの客もほとんどなし、私と従業員の居残り組と、ピアノの先生、夕方になると集まってきては、明かりを絞った地下のスナックで賭け事に熱中した。基本的にホテルの従業員は賭け事が禁止されている。ただいっとき、子供も従業員も賭け事が許された。それが過年から小正月、つまり元旦から元宵節までの十五日間。元宵節には灯籠を流し、灯明をともし、大小様々な形をした提灯をつるし、空にとばす。派手やかな一夜となる。私は実際に見たことがなかった。ただ写真で眺めるだけだった。

今でもこのホテルが正月期間に賭け事をさせているかは知らない。ただ、時代が移り、経営は息子が引き継ぎ、私を見守ってくれていたママも引退し、ピアノの先生は風邪薬を間違って投与され失明、その後しばらくして亡くなってしまった。古き良き時代は過ぎ去ってしまったかもしれない。

時代と場所が変わって中国廈門、昨夜、会社の連中と下町の屋台へでかけた。海鮮の美味しい店だった。ここではみな、店の連中も、会社の連中もミン南語、台湾語と同列の地方語を話している。まさに地元の店なのである。おごってくれたのは一人の運転手。無理をしていた。私とこの運転手、しこたまワインを飲み干し、いい気分で別れた。

タクシーで戻る途中、湖畔の中州が人混みで溢れかえっていた。暗闇の向こうは光り輝いている。車を止め、中州を歩いて帰ることにした。様々な工夫を凝らした照明のパレードである。酔って手元が定まらないままシャッターを切った。

[ 写真: ビルの照明、灯籠流し、湖畔の水面、元宵節のひとときの艶やかさ。 ]

No comments: