Thursday, March 22, 2007

[廈門・286日] 蜃気楼のような

一昨日から太陽らしい姿が見られるようになった。うっとおしい春霞、海からやってくるやや強い風がモヤを運んでくるのだ。そんななかでも春分を待っていたかのように雲間から日が射してくれる。太陽は形が崩れ、蜃気楼の先にあるかのようだ。それでも日が射せば少し汗ばむ。廈門は暖かくなければならない。これでいいのだ。

写真を撮った場所は建物の外、回廊の一角に設えられた喫煙点と書かれた場所。ここは常連がやってくる場所である。みな顔なじみになり、挨拶を交わし、情報を交換する。さすがにこちらでは女性が喫煙する姿は一度と見たことがない。私が忘年会で「さくら」を歌ったこともあり、すでに私が日本人であることは知れ渡っている。なかには二十年以上前、開放政策が始まった頃に日本語を学んだという方もいる。たどたどしく話してくれるが、何度か私と話しているうちに、昔覚えた日本語が蘇ってくるという。

ある男は、私にもし三十以前だったら密航しても日本に行って金稼いだのに、という。そして福建省福州あたりの密航方式について話してくれた。蛇頭といっていなかったが、彼ら手配師たちは、前金を受け取ることはないという。金を積んだのを確認すると、それをお互いで保管する。無事仕事が終わると手渡すことになり、不調だとびた一文受け取らないそうだ。商売を継続するため、信用を大切にするらしい。

さすがに以前ほど密航者は多くないそうだが、それでも拝金主義は根強く、力強く、ふとしたところで、普通の人間からもそれが首を出してくる。狙われる日本人にはなかなか友人というものができない。寂しいものである。

[ 写真: 雲を通して揺れるように見える太陽。それでも暖かい。いやいささか暑いのだ。昼間は約二十五度前後になる。 ]

No comments: