Sunday, October 22, 2006

[廈門・137日] 毛沢東の子供たち

廈門滞在が長い割には事情通になっていない。道を走っていても、ここがどこかも理解できていない。食い物屋も家の近くにあるどちらかというと高級料理店しか知らないし、ましてや酒を飲んでカラオケしたりお嬢さんと談話するなぞということも経験していない。まあ別の言い方をすれば、それで十分生活を満喫している、なぞとうそぶいてみることもできる。

先日、マーケッティング部門の新人のいささかデブな若者と一緒に町に出た。このデブ、ボスにダイエットを勧められている。「ブリキ猫を見ろ!彼はわたしが指令した三ヶ月で中国語の会話を理解できるようになったではないか!デブ、君も三ヶ月の猶予を言い渡す!その間にわたしの秘書程度まで痩せるように!」。これは本当の話である。お話を面白くするための作り事ではない。例に引き出された秘書も哀れである。彼女、先日結婚したばかり。ちょっと小太りのぽちゃぽちゃ。かわいらしい。しかし彼女を引き合いにするところが実に面白い会社なのである。

まあそれはそれとして、このデブを連れて三人、町に出た。廈門でも話題になっている食い物屋があるというので行ってみた。店の名前が「老知青 lao3 zhi1 qing1 」。七十年代の学生運動に荷担した人間には、「オッツ!あれか!」と手を打つに違いない。文化大革命という中国国内の内紛の時代、「下放 xia4 fang4 」といって、学生は実社会で体験を積め!地方に学べ!農村で働こう!運動があった。当時、わたしはいたく感激した記憶がある。どこかで今の千葉の片田舎のもとになったみたいなものかもしれない。「知青 (知識青年)」という名付けられた店、では一体どんな店なのか。

つたない翻訳でご紹介する。

・料理の分類:東北料理
・店の紹介:廈門の「比較的特徴ある」レストラン。店にはいると「文革時期の東北地方を思い出させる」、「至る所に毛沢東語録が」、「壁にはトウモロコシが掛けられ」、「椅子はオンドル」。服務員は「みな紅衛兵の格好を」、「緑色の軍服を身につけ」、「肩に軍包」、「さらにマネージャは軍用の水筒を」。餃子の味は「比較的まとも」、東北料理の味は「まあまあ」、「量がとても多く」、つまり「一寸雑」。価格は「高くはない」、口にしてみたいとお考えなら、おいでになって試してみるのも悪くないでしょう。

意地悪なわたしの運転手が一人の青年を捕まえて聞く。「鞄の中には毛語録入っているの?」、青年「はい」、運転手「じゃ見せて」、青年「いやいやいや・・・」。意地悪なあたし、彼らに声をかけてみる。「同志! tong1zhi4 」、誰も振り向かない。そりゃそうだろうな、ここの店で働いている若者たち、当時まだ生まれていなかったんだから。

[ 写真: 壁には軍用トラックに乗って下放する若者たちの姿を描いた漫画が。 ]

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