Thursday, September 2, 2004

「看海的日子ー風櫃の三合院住居」十年後記

台湾映画界の重鎮、侯孝賢監督若き日の作品に「風櫃からきた少年」という映画がある。澎湖島で生活する悪ガキ達の生態を活き活き描写して傑作だった。その 少年たちの仕種に勝って映ったのが、澎湖島の風景。どの場面も左右にのびた水平線が占めていた。台湾本島では見ることのない情景に一度訪れてみたい、で仲 間達と旅をした。

映画のなかで一番印象に残ったシーンがある。悪ガキたちが喧嘩をする。別のグループの人間に怪我をさせ、警察沙汰を引き起こす。家に戻るに戻れず、ガキた ちは海岸際に立つ小さな廟の前で思い悩む。ガキたちの横顔、小さな廟、波立つ海、夕日の赤。ここを訪れた大人たちは、小さな廟に座り込み同じように写真を とった。

atに文章が掲載されると、もの書きの友人から電話が来た。初老という表現はおかしい、自分の事を書いているとしたら初老ではない、同年代の人間に失礼 だ、というものだった。当時40台後半だったはずだから、今思えば確かにおかしい。しかし、カミさんが死んだ直後ということもあり、限りある明日などと思 い巡っていたのが、初老という表現になったのかも知れない。

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