Tuesday, September 7, 2004

北京の硯

komachiさんのblogのなかに魯迅の硯という記事を見つけました。真鍋さんとこの旅に同行した私にとって、この硯は羨望の的、以来中国を訪れるたびに捜し歩きましたが、見つけられませんでした。
北京で仕事をしていたときのことです。この硯の話をあちらの方に話をしたところ、週末にご案内しますといわれ喜びました。午前中、その方の家の扉を叩き出かけたのですが、案内されたお店に置いてあるのはみな高級なものばかりです・・・
 
市 内バスであちらこちら回って探してみます。王府井では、観光客を相手に骨董品を売りつけていそうな店、北京飯店の先に最近できた高級百貨店、そこで見たも のはみな、立派な彫り物が硯に組み込まれていて、魯迅が質素に使っていたものとは大違いです。魯迅の上海の簡素ですが上質な空間にはふさわしくありませ ん。案内してくれた奥さんは、私が首を縦に振らないのでいらいらしてきているのがわかります。私がほしい硯の使用を懸命に説明したのですが、どうも理解い ただけません。

あきらめてホテル近くへバスで戻ります。降りたところは近所の市場。一寸覗いてみませんか?とお願いし、市場の文房具屋さんに目をやるとありました。いとも簡単に手にできました。それも極安で。何しろ小学生が使う文房具だったのですから。

この話のオチはこうです。奥さんはいつも日本からやってくるお客さんの買い物相手をさせられていました。日本のお客さんはお金をうんと使って帰ります。奥 さんは、私もきっとそんな買い物がしたかったのだと、勝手に思ってしまったらしいのです。私はお金を持っていませんし、高級品に縁のない生活をしていま す。ただ、簡素で上質な味わいがほしいだけです。

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