Saturday, August 9, 2008

[廈門] アモイの静かな夜

夜、食事に出かけた。いつものお粥屋。時間はちょうど夜八時。店には従業員の姿しか見当たらない。それもみなテレビに向かって座っている。いつもの席に座る。店の男性が「前の方に座ったら?」。テレビがよく見えますよ、と親切心でいってくれた。いやいやいいですよと断る。ちょうど奥運会 ( ào yùn hùi ) の開会式が始まったところだ。派手な演目ごとに店の若者が声を上げる。食事の間、アタシ以外に訪れた客はわずか三人だった。

だし汁と米粒の柔らかさのころ合いがいいピータンお粥に、野菜不足にならないよう青菜炒めと唐辛子と煮込んだ昆布のつき出し、それと昨日おばさんがサービスしてくれたあげ豆腐を注文する。昆布とあげ豆腐はお粥にくわえ、ちょっと辛めに仕立てる。このところ毎日のように通っているが飽きることがない。腹もちのいいころ加減さもいい。

食事を終え外に出る。今日は涼しい。大通りにあるケンタッキー・フライドチキン、がらんとしている。いつもは夏休みで子供連れの多いこの店、今日は開店休業状態だ。(余談だがマクドナルドとケンタッキーのトイレは一般に開放されている。トイレは外から簡単に利用できる位置にある。公衆トイレの役割を担っている。ここアモイで立ちションしている姿を見たことがない。本当である。)

通りをわたると夏の果物、瓜を売る露店がある。季節もの、人気が高いがここにも人影はない。瓜は二つに割って客に果肉のころ合いと糖度を見てもらう。今日はそれも役立たずだ。馴染みの珈琲店に向かう。

珈琲店はアタシの貸し切りだった。いつもは三四人いる店の女性、二人だけ。二時間静かにコーヒーを味わったが、その間、客は一人として現れなかった。毛唐客が多いにもかかわらず、今彼らもテレビにしがみついているようだ。時折外を人が通り過ぎるが、ガラス越しに店内をのぞきこみ、アタシの姿を不審そうに眺めている。すべての中国人はオリンピックを見よう!翌日のメディアは、十億人近い人間がオリンピックを見た!と伝えそうだ。異端者は目につく。

アタシにとって静かなアモイの夜が過ぎた。

[ MEMO: いつもならサッサッと入れられていたカフェ・ラテ、今日はアタシのために心をこめた一杯がテーブルに上がった。 ]

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