十 月の終わりの週末、台湾東海岸の都市・花蓮を訪れたときのことです。市内にただ一箇所の小高い丘があります。ここに日本時代から使われていた建物があると いうので連れて行ってもらいました。この木造二階建ての建物は、市内と港を見渡せる絶好の場所に建てられていました。日本占領時代には、将校クラブとして 利用されていたようです。建物の名前を松園別館、きっと当時花蓮を統治していた人の名前かなと考えました・・・
建 物の作りもしっかりしていましたが、広大な庭には樹齢百年かと思われる立派な赤松が何本も残されています。この土地と建物、本来は国の持ち物でしたが、民 間に払い下げ、この辺り一帯を開発しようと考えたようです。一部の市民が立ち上がりました。松を残そうと。市民の輪は広がり、松の木を人が取り巻いて伐採 を阻止するまでになります。開発は中断され今では一民間人が管理をしています。当時をしのぶ展示とともに、美術展などを催していました。その当時とは日本占領時代のことです。あれほどまでに嫌われた日本時代の遺産は、いま市民によって守られようとしていました。この動きはここだけに限らな いことでした。私の三年間の空白の後に訪れた台湾で、もっとも大きな変化ではなかったでしょうか。台北市内のかつての日本人墓地に建てられた違法建築を取 り壊し、公園に整備し、慰霊碑の計画も持ち上がっていると聞きます。
この動きは、昨日来日した李登輝さんが台湾総統になってからということのようです。政権政党だった国民党にありながら、徐々に台湾を自立させようという彼 の目論見は、徐々にそれまで目をつむってきた人々に影響を与えたのでしょう。阿扁と国民から愛称で持って呼ばれる陳水扁現総統は、憲法も国旗も国歌も国花 も本来の台湾のものではない、といついつまでに新しいものに変えましょうと提案しています。日本の占領時代は台湾の歴史の一部でったと素直に語りましょう と、教科書の書き換えも考えています。
東アジアでは徐々に政治的な摩擦が起きてきています。北朝鮮、中国、韓国、台湾、それに日本と、それぞれの国がそれぞれの立場を明確にしてきています。東 アジアはどうなっていくのでしょうか。これからは面白い東アジアのあちこちと語るには慎重さが必要になってくるのかもしれませんね。
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