Wednesday, February 9, 2011

[通霄・三義] 初三 - 人人人そして通霄米

 [写真:深夜の新竹駅]
厦門時代の同僚で台湾人、春節を前に彼が大陸から戻ってきた。戻るなり私の携帯に電話がかかってきた。「...どこにもいかない?それはよくない、私のところまでいらっしゃい」。

実は二年前も同様、春節に彼の誘いで出かけたことがある。その際には田舎の連中を相手に、身の程知らず、酒を飲み交わし酩酊してしまい、前後不覚になってしまった。後悔の念が残っている。気が進まなかったが強く誘われたのに乗って出向くことにした。

初三(正月三日)、青空の広がる晴天である。それまではひたすら厚い雲が立ち込めていたものの、春節を迎えたとたん暖かな日が訪れた。そんななか、台北から高鉄(新幹線)で新竹へ。そこで私をピックアップ、彼の奥さんの実家のある通霄へと向かった。通霄は苗栗の郊外、海岸沿いの町である。これといって特徴のある風景は見られない。その町外れにある実家でご両親と合流し、親戚一同の集まる街中の臨時に設けられた小さな宴会場へ。

集まった人たちは二年前の私のことを覚えていたようだ。私だけが記憶の彼方にある。なにしろ酩酊のなかにあったのだから。ただ不思議なことに、集まった方々のお名前も顔も覚えていなかったものの、ご両親の住む家やそこに至る道のり、前回宴席のもたれた場所や周りの風景は思い出せた。

会食が終わり、三々五々にみな家路に着いた。日はまだ高い。友人は奥様と子供たちを置いて山に向かって車を走らせた。苗栗郊外、山間にある三義に。ここ は木彫で有名である。かつて日本統治時代、木材を切り出し、樟の木から樟脳を生産する、そこで出た木塊を刻んできた歴史のある街である。快晴の正月休み、 三義に向かう道路は車の列。しかしわれわれは脇道にそれてさらに山間に。そこは鉄道ファンには馴染みの、今では観光列車しか走らない舊山線の勝興駅へ。ど うやらここも人気スポットらしく人人人であふれていた。駅前のおみやげ街に”狀元糕”を目にしたので食してみる。台北の自由市場で見つけたものより大き く、その分味も大味値も幾分高かった。
[写真:屋台の狀元糕。ネットに製法が載っていた。材料は比較的手軽に入るはず、もしくは代用品を用いてもよし、どなたか試しに作って食してみてはいかがでしょうか]

日が落ち、急速に気温が下がる。本来ならこのまま私を送り返すため、高鉄新竹駅に向かう予定だったが、実家に戻って夕食を、ということになった。通霄に着くと、外で、どこそこのレストランで食べるだろうと、予定外で満足な食事の準備ができていないとご婦人が口にした。

見た目、昼間の食事と比べようもないテーブルのうえの惣菜。いかにもあっさりしている。ご夫人もおばあちゃんもこんなものしか用意できなくて申し訳ないという。いつもの家庭料理ですよという。いやいや口にできればそれでいい、ありがたいのです。

白いご飯を口にはこぶ。ん?今まで食した白米とは一味もふた味も違う。
「このご飯おいしいですねー。どこのお米ですか?」
私の言葉は以外だったようだ。
「地元のお米ですよ、おいしいですか?」
「美味しいです!」
新米だったのか、それともこの地のお米がもともと美味しかったのか。

台湾の米は日本統治時代、台湾米(蓬莱米)の父と呼ばれた日本人農学者磯永吉によって品種改良が繰り返され、日本人の口にも合うお米が獲れるようになったという。最近では美味しいお米の銘柄は池上米だといわれている。寿司にあう米として寿司米という銘柄もあるものの、いままでこれはという食感を得たことはなかった。食事の際、米の銘柄について話したことがないので、池上米を口にしたことがあるのかないのか、自分ではわからない。比較はできないが、ここのお米、通霄米は私の口に合った。うれしい喜びである。それを口にできたことは今日最大の収穫である。

料理を賄ったおばあちゃんの細い目はさらに細まっていた。

高鉄新竹駅に着いたのは夜の九時、台北への切符は11時過ぎのものしか入手できなかった。二時間、暇をもてあまし、行き来する人を観察した。

[写真:列車の席につく。高鉄の雑誌と中には恵まれない子供たちへの寄付を募る袋。切符の裏側に舊山線の勝興駅の記念スタンプ。日付に100とあるのは今年が中華民国建国100年。]

2 comments:

fumanchu said...

舊山線の東側の大湖郷は李喬の「寒夜」の舞台になっていますね。

http://dehoudai.exblog.jp/9949379/

この辺りも一度行ってみたいものです。

burikineko said...

通霄は海際で一年を通して風が吹いているそうですが山あいの三義は落ち着いていました。しかしこのあたりを訪れる際には週末と祝日を避けることですね。車と人で風景が妨げられますから。