不思議なものでなんでも”飽き”ってものがやってくる。かつてはホームページに、そしてblogに、今やtwitter、やがて興奮が去っていく。持続することの難しさ、いまさらほざいてみても手遅れなのだが......
blogを更新していなくても身の回りではいろいろなことが起きている。それも起伏の激しい変化が訪れている。ゆえにいつも疲れる。特にこの夏の暑さと湿気が加わり、これで身体までバテバテである。とはいえ、秋分も過ぎたことだし、落ち着いてデスクに向かおうかと、たまっていたあれこれから心穏やかな話題を取り上げることにした。
7月16日の金曜日、二ヶ月前、台北の南、竹東にでかけた。ここの知人が盛んに土地購入の段取りを進めている。今は大陸北京あたりでコンサルタント会社の役員を務めているが、やがて故郷に戻る下準備らしい。新しい山地を購入したいので見てほしい、この一言に私はひとつ返事をした。こちらにはこちらの目論見があった。
竹東に出かけるひと月ほど前、日本からメールが入っていた。「鉄男さんじゃないですよねー。鉄道関係のなんかネタありませんか?」。懐かしい、アネさんからだ。まったく鉄男ではないですし、鉄道にもほとんど乗っていない。新幹線を利用するぐらいで、ローカルな味を楽しんでもいない。「ないですよー」と返事を出したものの、鉄道かー、思いが馳せた。早速地図で探ってみる。
しかしローカル線と思われるものはほとんど見当たらない。「恋恋風塵」という映画で「十分」という駅までの映像が流れた。これは平渓線、台湾北部東海岸沿いにある端芳駅から出ている。渓谷沿いに緑深い山あいを縫って走っている。まだ乗ったことがない。
台湾西部、新竹から山あいに入った竹東駅、ここから西部幹線内湾線がでている。終点が「内湾」、山あいでなぜ内湾、名前の由来は知らない。このあたりには客家人が多く住んでいた関係で開発の遅れていた地域。住民の足としてローカル線が残されていた。そして経済発展、遅れてやってきた発展。遅れた分、残っていたのが古い町並み、古い建物。これを観光に利用して成功したのがこの内湾界隈。週末は台北から直通で臨時電車が出ているという。訪れてみたい。機会がやってきた。
土地見の場所から車でほんの二十分、切り立った山肌のあいだ、等高線に沿って走る鉄路、その終点駅のやはり等高線沿いに連なる家屋、ほとんどが飲食雑貨店、明らかに観光客目当てのしつらえ。とはいえ、「悲情城市」の「九分」のレンガ造民家と違い、木造で、おおくは平屋で、古び、よく目に馴染む。
駅前の、おそらく昔は小さな広場だったろう一角に、木造二階建ての映画館が残されている。当時、この町が栄えていただろう時代、この映画館が上映したフィルムを食事つきで観る、いや食事をしながら映画を。中は当時のままだそうだ。売店には非売品ながら当時のタバコが並べられ、上映もののDVDを手に入れることができる。薄暗い館内に入ると、力道山時代かと思わせるような白黒フィルムが流されていた。急な梯子に近い階段で二階に。粗末な椅子とテーブルで食事をする客、薄暗く、そのメニューは判別できない。しかし落ち着く。懐かしい。観光客でにぎわう喧騒は木造の床壁天井が吸収してくれる。同行した方の話では、映画館は演芸場でもあって、島内を渡り歩く劇団が一瞬の華やかさを送り込んでくれたそうだ。
十年はたっているだろう、九州熊本の小国へ所員とともに知り合いを尋ねたことがある。町中でスパーを営んでいた。その脇に小国会館、ここの人たちの自慢は、水前寺清子、熊本出身、彼女がショーを開いたこと。今では町の寄り合いに使う程度だと聞いた。内湾の映画館、どこか小国会館に似ていた。
4 comments:
田舎歌舞伎みたいな、
「おー、コヤマクンじゃないか、こっちへこいよ、弁当食え、ほれ、茶碗。何だ、飲まんのか、泊まってけよ、引佐町にも旅館ぐらいあるぞ。」ってやつですかね。
burikinekoの幼少は東京都心で育ったもので、映画館というとコンクリート造りの、空襲から逃れた立派な建物でして、ションベン臭い場末の映画館というと大学時代、映画を見漁りはじめて知ったんです。この内湾の映画館、そんな雰囲気に満ちていましたね。
訪れたときに上映されていたプロレス映画、いったい時代はいつなんだ、って感でした。
陳昇の
「P.S. 是的, 我在台北」に
「二十年以前」という歌がありました。
田舎の古い映画館みたいな、
珍しく英語を挟んでいるので、そこだけ小生でも分かります。オススメなんですが、ぴったりし過ぎかもしれない。
作詞が西洋人のようですね。作曲を陳昇さん。
歌詞はちょっと綺麗過ぎるような...私には。
この陳昇さんは「鼓聲若響」という台湾語の歌を聴いたことがあります。元気いっぱいなおっさんのようでした。
「鼓聲若響」を阿妹(張恵美)が、こちらは情感いっぱい、情熱的だったのが印象的でした。
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