私は台湾滞在ビザを取っていない。九十日を越えてブラブラしていると不法滞在になり、多額の罰金を支払うことになる。一度ならず二度もこの件で面倒を引き起こした経験者である。どちらも私の能天気な性格、いや自分を管理できていないことが原因でおきたことなのだ。それにここ台湾に特別な庇護者がいるわけではないので保証人もいない。
そんなこんなで、人様には職業を ”無業遊民 [wúyèyóumín] [ㄨˊ ㄧㄝˋ ㄧㄡˊ ㄇㄧㄣˊ]” と伝えている。”無職渡世人”、翻訳に間違いないと思うのだが、こちらの方はそれは単なる失業者ですよ、”自由無業”ではどうですか?という。 ”嬉皮 [xī pí] [ ㄒㄧ ㄆㄧˊ ] ” (嬉=女偏+喜)ヒッピーかー、似たようなものだがまあそれもいいか。
横道にそれるが、この”無職渡世人”という語呂というか声調が好きというか、辰巳竜太郎という新劇の大御所さんが、東映任侠映画のなか、吉良の仁吉を演じ、警察官に職業を問われたときの返答でして、これをいたく気に入ったので使わせていただいている。
ともあれ、七月末にビザの有効期限が切れてしまう。出国しなければならない。香港の知人から消息を問うメールが届いていたこともあって、会いにいってみるかとも考えたが、あそこは辛い。ラッシュアワーの地下鉄に一度乗り合わせたが、東京以上に息苦しいし、潤沢な金がなければそれこそ無職渡世人、誰も相手にしてくれない。せいぜい新しい携帯を手にするときぐらいに出向く場所、だと私は考えている。
やはり大陸厦門か。緑豊かな湖濱北路あたりのコーヒーショップでだらだらと過ごし、私の口に合うカレーライス専門店で華やかな夜景を眺めながらカツカレーを口にし、人造湖の周りをなにをすることなく歩き回り、旧市街の迷路のような界隈に元運転手が営む洋品店へと足を運び、雑談に花を咲かせながらお茶をすする。知人は一人、また一人とこの地を去っていったので相手を探す手間も省ける。そして週末をはさんだ七月末の四日間、私は厦門に出かけていった。
それからまた台湾滞在九十日を迎える。おそらく今回も厦門への旅になりそうだ。しかし今までとはちょっと違った過ごし方を考えている。厦門本島、そう厦門は海に囲まれた東京山手線より一回りぐらい大きい程度の適度なスケールを持つ都会、その沖合いに浮かぶコロンス島、かつての租界の島に滞在するつもりだ。租界時代の別荘を改装した瀟洒なブティックホテル、そこで何をすることなく、日々海を見ながら時間が流れるのを待つことにする・・・。
こう書くと贅沢三昧っぽいが、バスつきシングルが190人民元、最上階三階の一番高額な部屋で388人民元、日本円三千円弱から五千円ちょっとのルームチャージ。ホテルのサイトをご紹介しようとしたら”This web page at www.○○○○.com has been reported as an attack page and has been blocked based on your security preferences.”とでた。つい先日までなーんの問題なくみれたんですけどね。
*写真は厦門の東渡フェリーを出た沖合い。ブイの右側にぼんやりと見えるのがコロンス島、左側は厦門本島輪渡フェリー周辺。
*発音記号が文字化けしているかもしれません。その場合はメニューの表示のなかのキャラクター・エンコードをUNICODE (UTF-8) にしてみてください。
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