Friday, October 15, 2010

[台北] ガジュマルと共棲する建物

不思議というほかない。ガジュマルが壁をよじ登り葉を茂らせている建物。何十年もかかっている。私が馴染みにしていた飯店裏の通りの建物。三十年前と変わっていない。変わったのはガジュマルが建物と共棲している姿だ。

台湾の田舎を旅すると小さな村の小さな広場に枝を大きく広げたガジュマルをよく目にする。夏の昼下がり、その下でご老人が籐椅子で昼寝する姿がなんとも長閑で、あんな生活ができたらと思い続けていた。そんなこともあり、こちらでの景観設計、庭作りに提案するのがガジュマルのある庭。ところがこれがなかなか受け入れられない。

ガジュマルは根が強い。枝が地中に向かって伸び、入り込み、横に下に伸びる。自身の重量を支えている。この根が厄介だそうだ。建物の基礎の下に入り込む、壁にひび割れをつくる。周辺に空間の余裕がなければ植えられないという。そういわれて思い浮かべてみると確かにそうだ。広場とか公園の中、キャンバスの芝生の中でゆったりとしている姿が目に浮かぶ。

ではこの写真の建物はどうなのだろう。すでに三十年以上が過ぎている。嫌われるガジュマルならばとうの昔に根元から切り倒されていたろうに。もしかしたらそれを繰り返してもまた枝が出てきたのかもしれない。人さまのほうが根負けしたのかもしれない。強力な生命力。しかし私は、厄介なのかもしれないが、緑の少ない都心に建物とともに生き続けている姿が目に優しいので気に入っている。

まるで「ラピュタ」の城に出てくる廃墟のような建物、先日火災を起こした建物である。写真は数ヶ月前に特長ある都会の風景として記録していたもの。

火災の原因の消息が入ってきた。ある女性が屋上の部屋を借りていた。この女性、部屋にごみを溜め込んでいた。ごみの種類によっては売りに出せる。しかし彼女、そんな素振りもなく溜め続けた。住民からも文句が出て当局がしばしば勧告するもそのままになっていた。部屋に備えた電子蚊取りが明け方に山積みされたごみを燃やした。頭にきたのはその部屋を貸していた大家だろう。屋上の増築はもともと違法建築の部分、今後は建て直しもできなくなった。

余談:火災の当日、ほぼ鎮火したので戻る途中のこと。大通りをタクシーから降りてきた女性を目にした。中年の女性。私に向かって尋ねる。「火事はどこ?」。目元が当惑し顔が引きつっている。バックを開き鍵束を探しながら火元に向かっていった。明け方五時半のこと。お水系の方には見えない。何があったのだろう。

1 comment:

fumanchu said...
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