Saturday, October 25, 2008

[廈門] 悲喜相継-一人の倒錯者

 
はるか昔イランに遊んだことがある。まだパフラヴィー政権時代だったころ。驚かされたのは、見知らぬ男が二人会話を始める際、お互い相応の地位にあると確認されるとすぐさま、旧知の仲のように抱き合いキスを交わす。それも髭だらけの男二人が。

アラブに関して知っている記憶をたどると、一人の西洋人に行き当たる。英国アラブ局情報部に属したT.E.ロレンス中尉。いわずと知れた「アラビアのロレンス」。彼はオクスフォード在学中から中近東に出向いていた。アラビア語を自在に操るいわゆるアラビア通である。英国情報局員としてオスマントルコをアラブの地から追い出すことに全力を挙げる。若かったアタシはこの映画に傾倒し、「中国のロレンス」になるんだとほざいていたこともあった。

アラブの文化・習慣を理解し利用できたのは、アラブ局でも彼は飛びぬけていたらしい。異文化の中にあって力を発揮するには、単なる知識だけではどうにもならない。それはここ中国にあっても同じだ。

ロレンスは生涯結婚していない。女友達らしい人間もいなかったという。映画の中で、偵察に出かけたトルコ占領の小さな町でアラビア人狩りにあい詰め所に連れて行かれる。そこでトルコの将校(ホセ・フェラが演じていたが、彼が実によかった)にその日の慰み者にされる。激しく鞭で打たれるロレンスがあげる声を、部屋のドアを小さく開けて覗き見する。これは映画の中の話である。実際は、翌朝路上に放り出されたロレンスの身柄を受けた人の話では、彼の顔から何があったかは読み取れなかったという。鞭に打たれたのは確かだが、その後のことは彼も生涯語たらなかったという。

あまり知られていないが(今では知れ渡っているか・・・)、映画の中、砂漠に出てからのロレンスは化粧をしていた。目の周りに手を入れていた。このひと筋で彼の視点が遠くにあるようになった。ダマスカスを越えてアラブをひとつにという途方もない妄想を。(当時、英国のアラビア地図に国境線はない。地図の上からはアラブはひとつだった。当然イスラエルなぞそのかけらもなかった。)

[ MEMO: 人の評価というものは表裏あるもので、ロレンスだろうとそこから逃れることはでない。誇大妄想、目立ちがりや、自己中などなど。歴史に名を残すにはそれくらいでなければならないのだろう・・・。 ]

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