Wednesday, October 22, 2008

[廈門] 悲喜相継-願わくば 花の下にて・・・


歌人・西行について詳しいことはまったくないものの、彼の晩年にしたためたこの歌を、なぜか好きだった。「・・・春死なん この如月の 望月のころ」。理解しているわけでない。ただ好きなのだ、気分が。花は桜で満月の夜に、なんと贅沢なこと。

相当昔の台湾映画「悲情城市」、劇中の時代は千九百四十年代末のこと。占領地から追い出される日本人の中に小学校の女性教師がいた。その父親は祖国に戻ることなく自殺を図る。遺品を整理しながら、日本教育を受けた台湾の若者が妹に語りかける。「・・・明治時代にひとりの乙女がいた。そして彼女は一番美しいときに自らの命を絶った。桜の花が散るように。・・・」なんて内容のシーンがあったが、日本人のアタシは日本にいてそんな話しを今まで聴いたことがない。監督か脚本家が昔、やはり日本教育を受けた年上の人から話を来たのかもしれない。

欧州宇宙機関が打ち上げた無人補給宇宙船(ATV)の「ジュールベルヌ」。先日任務を終え、大気圏に再突入して燃え尽きていくフィルムを見た。散り際の美しさ。漆黒の闇の中、音もなく燃え尽きるさまにアタシは不可思議な思いにとらわれた。

勝間の片田舎で見た雲ひとつない満月の夜、地上は凛とした光景、棚田の上から見下ろすとばっちゃんの家の吉野桜が緋色に見えた。薄化粧をしたかのようだった。桜は自ら命を立つ寸前にそんな姿を見せたのか。

散り際、去り際、潔く、なんて考えて特攻隊を美化し正当化したりした。いや、話が横道にそれた。西行の心境いかなるものだったのだろう。やたら未練がましい男だったという話も聞くが・・・。

[ MEMO: フィルムに音はない。それがいっそう見る人間を引き付ける。ここ厦門にいると音のない世界に入り込みたくなる。勝間の冬の片田舎、夜中に床についていると、椎の実が枝づたいに地上に落ちる音が聞こえた。そんな音、ここでは味わえない。 ]

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