Monday, June 28, 2004

「台湾の安室奈美恵」?張恵妹

話 は遡って去年の蘇州。現地の投資家たちが会議の後にカラオケクラブに招待してくれました。開店間もないこのクラブ、オーナーの台湾の方をTVが取材してい る最中でした。古いかつてのオフィスビルを大胆に改修したもの。実に空間をおおらかに使っています。ゆったりとしたなだらかな階段、中国の故建築などの素 材で飾られた壁、やはり天井から吊るされた中国の古い木造船。なかなかのものです。先日には日本の建築写真雑誌社も訪れたとのこと。

クラブはみ な個室、シックでモダンなしつらえと、ここも手は抜いていません。それにサービスも最高、礼儀を心得たマネジャーがもてなしをしてくれます。接待されたも ので支払いのほどは分かりませんが、昨今の並みの銀座などよりはるかにいいのではないかと・・・(残念ながら銀座情報は得られていませんが)。

「カラオケ」とマネジャーの名刺に刷り込まれていますから、カラオケをします。モニターに一人の歌手のライブが映し出されていました。原色を使ったパッチワークの衣装を重ね着した彼女のフリに惹きつけられました。友人に尋ねると
「張恵妹(zhang hui mei)です。彼女は原住民の酋長の娘さんですよ。台湾の安室奈美恵と呼ばれたこともありました。知っていましたか?」。
そういえばモニターの中の彼女、髪をひっ詰め、小顔で、目が大きく黒くキュートです。安室奈美恵に似ているかもしれません。しかし歌はバラード、音域は下から上まで破綻がありません。このときから彼女のCD探しは始まりました。

時は過ぎてほぼ一年後、安室奈美恵のライブコンサートの下準備で台北に。仕事を終えた帰国前日の夜、時間の許す限りで市内のCD屋を覗きます。張恵妹の手 元に無いCDとライブDVDを購入、中国版の勝手に編集されたものでなく、ちゃんとお上から許可を取ったもの。で、蘇州のクラブで聞いた「聴海」と、なぜ か勝手に編集されていた中国版に勝手に挿入されていた台湾の老歌のライブ「鼓聲若響」と、新盤・リバイバル版に混じって蘇?(su rui)という歌手の歌手生活20周年特別選を見つけました。

「そうか、蘇?はまだ健在なんだ」。そう、十七八年前の台湾で見つけた、圧倒的な歌唱力で台湾のポップス界に君臨した歌手です。「一様的月光」(yi yang de yue guang)「是否」(shi fou)など、高域の音程と張りのある声とが、ほかの歌手とは一つも二つも違っていました。そのCDケースに印刷されたリストには、<蘇?+A-Mei演 唱>とあります。A-Meiは張恵妹の愛称。張恵妹のライブに蘇?を特別招待し、蘇?の持ち歌をデュエットで歌ったものが入っていました。

後日、台湾の若い友人にこの話をすると、張恵妹は蘇?の歌を若いころから愛唱し、尊敬もしていたのだそうです。二人はともに優れた歌唱力・幅広い音域・正 確な音程を持ち合わせています。二人とも歌の種類も豊かで、ポップスからジャズ、老歌(古い歌謡曲)、民謡(張恵妹は阿美族の歌を現代風にアレンジ)、街 歌(蘇?は昔の廃品回収ー酒瓶ーリヤカーを引いて街中を歌いながら流していた歌を)と幅広く歌いこんでいます。また二人とも台湾では少数派、一人は原住民 (の娘さん)もう一人は外省人(の娘さん)なのも縁なんでしょうか。

張恵妹にとって、もしかしたら「台湾の安室奈美恵」といわれることは不本意かもしれないなと思いました。

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