Friday, February 11, 2011

[台北] 「練將」と高慧君 - I

[写真:族群與青少年 《練將 Teen Patron》タイトル]
台湾の地方都市でよく目にする光景、若者たちのだらしのない格好、大人たちのがなり声、男たちはところかまわず口から檳榔(ビンロウ)の真っ赤な液体を吐き散らす、誰もかれもががさつな振る舞い、空き缶が転がりビニール袋は宙を飛ぶ...。そのような環境にいる少年たちは何を考えどうしようとしているのだろうか...。
原住民族電視台では今、かつて放映された「映像-公與義」のなかから、おそらく、原住民が関わったフィルムを選んで紹介している。このタイトルは仰々しい。由来を調べてみると、(中国)時報文化事業の董事長余紀忠氏が、公共政策の研討、国民のコミュニケーションの有効性、国民のコンセンサス、国の今後の重大な政策のための方向を確立する、ことに役立てばと「時報文教基金會」を設けた。そして「公與義」の核心とは、「身近な生活現場の研究、教育・経済・社会・環境・医療…等をテーマとした映像を記録し応募」してほしいというものである。

この「公與義」をどう日本語に置き換えたらいいのか戸惑った。基金会の英文をそのまま引用すると”Justice and Rightfulness”。多義な意味が含まれる一言で難解である。時報文教基金會は毎年記録映画を公募する。参加資格に制限はない。誰でも自分の意見を映像で紹介できる。数名が選ばれ、基金から奨励金がでる。

先日放映されたのは「練將 Teen Patron」、「公與義」に応募し入賞した作品。話の大筋は書けるがいい加減なところがあるかもしれない。私の語学力がついていけない。知りたいことがあるのに理解できない。しかしそれでも記録しておきたい。このフィルムは価値があると思う。
[映像:「練將 Teen Patron」最初の五分間]
原典:族群與青少年 《練將》 http://blog.xuite.net/cceforg/movie/28226661
台東にある小さな廟・聖賢宮が舞台。元宵節に執り行われるまつりごとで武将・神将を演じるため訓練に励む少年。映像が始まるとすぐ、彼らの下流・賎しい日常が紹介される。

海岸べりで自らを聖賢宮のごろつきと紹介する少年。むき出しの肩には伝統的な刺青が。

真夜中、廟からまつりごとに使う道具を引き出し太鼓を鳴らしている。と廟のあるじがくわえタバコでやってきて廟の宝を勝手に持ち出すな!と少年をなじる。小突く、頬を叩く。弁解するも聞き入れてもらえない。

廟の前の広場で神将の振りを練習する少年。カメラに向かってこれでもかという汚い台湾語で語りかける。字幕では標準語が、端々に伏字が。伏字には”x”が当てられている。

最初の五分間である。私はやりきれなくなって見るのを止めようと思った。作者は何を言いたいのだろう。ごろつき少年と地回り社会を晒そうとしているのだろうかと。何とか我慢しながら見続けているうちにいつの間にか画面の中に入り込んでしまった。

カメラは自堕落な彼らの生活を追い続ける。500元が手に入る。女友達と弟を連れてカラオケ屋に向かう少年。だらしなくマイクを握り唄う。酒が効いてきたのか歌いながら脇のゴミ箱にもどす。もどしては歌を唄う。家を無断で離れ、三日三晩、元宵節の行事を廟を取り巻く環境の中で過ごす。きつい廟での生活、しかしそこから離れようとしない少年。

不眠不休の時間を過ごした後、少年は家に戻る。戻ってきた少年を相手に父親が酒を飲む。父親は一晩中飲み続け、前後不覚になって夜を明かす。脇で幼い弟妹の面倒を見る少年。少年は作者の問いかけに答える。「...台東(市内)にいきた。仕事をしたい。稼いで女友達を養いたい...」。番組はここで終わる。

引き続き後半が始まる。主持人・司会者が映像作者から作品の狙いや背景について聞き出す。二人のカメラマンが参加した。そして主持人の率直な疑問が作者に問いかけられる。

この番組の主持人は高慧君、本名白芷·雅達烏尤安娜、鄒族原住民出の歌手で俳優そして最近は記録映画の演出を手がけようとしているという。台湾では有名だそうだが、私が彼女を知ったのはつい最近、TV連続ドラマ「風中緋櫻-霧社事件」のなかで賽徳克族の頭目の娘・馬紅役を演じていた。それから十年近くたっている彼女は、劇中の悲嘆にくれる姿とは打って変わって明るい。番組でのゲストへの鋭い問いかけ、核心を突く質問、締めで語る自分の意見。彼女の聡明さを表していた。

そんな高慧君とヤクザな世界に入り込んで撮り続けた映像作家との対談は続きで紹介したい。

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