Thursday, February 24, 2011

[台北] 八部合音 - 神への返信

神との会話は可能なのだろうか。この音を聞いているとそれができるような気がしてくる...。

”不能遺忘の歌”という番組がある。部族に伝わる古い歌とその由来をドラマ仕立てで紹介している。案内役に布農族出身の舞踏家でシンガーソングライターの朗蔚という女性。彼女が自分の出身地、布農族の部落を回って伝承しなければならない音楽を紹介するというもの。

布農族は賽徳克族や鄒族(ツォウ族)などの部族同様台湾の一千メートル級の高地に住む。かつての狩猟民族で、穀物に雑穀の小米・粟を食し自給自足の生活をしてきた。厳しい自然条件だ。小米の収穫は部族の存続に関わっていただろう。台湾南部の平地では年三耗作、より多くの人たちを賄うことができたが、千メートルの高地ではどうだろう。彼らは毎年収穫を天に祈るより他になかったのではないか...。
 朗蔚がここに住む布農族の文化を記録し続けている人を訪ねる。
彼は朗蔚に尋ねる。
「若い頃に部落を出て久しぶりに戻ってきたけれどもなぜ?音楽の霊感を取り戻しにきたの?」
「そうなの。どうでしょうか」
「それじゃ布農族の音楽的震撼を受けられるものをあげよう」
彼女が目をつぶり両手を差し出すと、手のひらに小米の穂がおかれる。
「pasibutbut(八部合音)...」とつぶやく彼女。

八部合音とは何だろう...言葉で表せない。まずは聴いてみてほしい。世界中の原住民族の音楽、現代音楽、宇宙に発信している合成音、どれにも属さない不思議な音を奏でている。
ここで奏でられた音は「祈祷小米豊収歌」と呼ばれる。小米収穫の感謝を神にささげる音である。神に応える音である。

八部合音について記した記事に

五線譜を学ぶ必要はない
和声を学ぶ必要はない
布農族にはいつからかわからないが自然天成の複合音の音楽が伝わって今に至っている
...
 その昔、私たちの周りには多くの神が存在していた。奥深い森に、深い海に...。多くの修行者はそのような場所で神との交わりを、霊感を得ていた。神がかりは今の日本では少なくなってしまったが、学者曰く、生後間もない幼児には霊感を受ける力があるという。しかしそれも人工的で複雑な社会構造の中、早々と消滅してしまう。もし、深い自然の中、シンプルなライフスタイルで、自然の恵みを受け、木を切るにも山中の動物を狩猟するにも感謝の気持ちで収穫をおこなっていたなら...可能かもしれない。

ちなみにここに登場する部族文化を記録する男性は、原住民族電視台で族語新聞布農語のアナウンサー倫敦・Landuun Ismahasanである。番組では民族衣装を纏い、八部合音の輪に参加している。舞踏家の朗蔚は、高慧君が主演を演じた「美麗晨曦」の主題曲の作詞作曲を担当している。

2 comments:

fumanchu said...

これは唖然、という感じですね。

burikineko said...

へえ まったく

最初はえー原住民の伝統的な音楽かー
って見てたんですけどね

へえ まったく うれしい驚きでしたんね