Thursday, January 29, 2009

[台北] 温泉と新幹線と


初二、正月二日。こちらの大哥(大兄)が正月の温泉に招待してくれました。台北郊外の山間にはたくさんの温泉があります。日本が占領したときには、北投というところに将校用の迎賓館を作ったりしていますし、終戦後には飲んで歌って温泉つかってお遊びして、という一大歓楽街にまで発展しています。遊び方が変わってからは徐々に廃れ、その最後のころ、定宿の女将が私たちを招待してくれたことを覚えています。もう三十年近く前のことです。遊び慣れない私には戸惑うことばかりでした。

この日は北投ではなく、その少し手前の石碑。都心からMRTに乗ってほんの二十分、そこからバスで十分、山間に何件もの温泉がありました。日式温泉と書かれています。露天と個室の温泉、私たちは露天の大風呂に浸かります。硫黄泉です。肌がつるつるになりました。あちこち皮膚がむずかります。身体の中に毒素でも残っているのでしょうか。

山の上のほうとあって、遠くに台北市内にそびえる101という超高層ビルが正面に見えました。一人200元、日本円で5~600円。ついでに中のレストランで昼食をとります。朝十時に待ち合わせ、昼二時過ぎには家に戻りました。気軽で簡単な時間の過ごし方です。

初三、正月三日。温泉疲れからか九時過ぎまで寝てしまいました。起きて用足しを済ますと電話が。新竹という台北の西に位置する都市に中国から里帰りしていた知人からです。すぐに来い、新幹線に乗れば昼前には新竹に着く、そこから車で上さんの実家に行こう。田舎の新年会だ。

あわてて歯を磨き、食事もとらずに飛び出しました。台北駅の新幹線の自動切符売り場で、訳が分からずあちこちのボタンを押していたところ、親切なおじさんが丁寧に順序だって教えてくれました。一汗かいて切符を購入できました。新竹まで32分、290元、日本円で約800円程度。乗り心地はまさに日本の新幹線、早い早い、瞬く間に目的地まで。そこには知人が出迎えてくれていました。

高速を経て海岸べりのフリーウェイ、そして苗栗という町に入ります。知人は田舎だ田舎だというので自然溢れる光景を期待していたのですが、何のことはない、普通の街中です。しかしさすが田舎、新年会はどこかの事務所の二階、そこに11卓の親類縁者およそ百人近い大宴会。田舎の方々ですから酒をしきりに進められました。その上珍しい日本人です、家内のお父さんだ、家内の兄貴だ、お父さんの弟だ、何がなんだか分からないうちに酩酊してしまいました。

場所を移して今度は知人の上さんの実家で食事です。私は腹にものを詰め込むと吐き出しそうでしたので、ひたすらお茶を飲み続けました。知人の進めもあって二人は早めに席を立ちます。また車で一時間ほど、新竹の新幹線駅に。何とか台北まで戻ることができました。知人の招待には感謝ですが、もう年です、お酒はそこそこにしておかないといけませんね。

[ today's photos ] 左側が露天風呂からの眺め。鉄骨と木造を組み合わせた面白いつくりでした。右は新幹線切符。これが領収書代わりになります。正月休みは自由席なし、みな指定席。ゆっくりできました。日本のように指定席を購入しても自由席代わりに使わせるやり方は大嫌いです。

Monday, January 26, 2009

[台北] 冬の花火


新年快楽!今日は農暦の旧正月。除夕(大晦日)には家族そろって食事をゆっくりと取る、それが台湾での大晦日の過ごし方だそうです。昨晩、幸運にも私はお呼ばれされました。厦門から戻ったクリニックセンターの理事長さんのお宅で、久しぶりに美味しく、そしてゆったりと、それも女性陣に囲まれて食してきました。薄味の、油の少ない、街中の料理屋さんでもなかなか味わえない味でした。とりとめもないおしゃべりをし、NHKの番組を見、夜遅く帰路に着きました。ところがMRTは十時前だというのに動いていません。仕方がない、タクシーで帰宅です。

自宅近くの商店街はすでに真っ暗、しかし小さな光の輪がたくさん動いています。子供たちが花火を手に回しているのです。年越しの花火、薄暗闇の中、光の輪はとても和やかです。線香花火ではありませんが、それと似てパチパチパチパチ音を立てて瞬いています。自分の子供のころを思い出してしまいました。都心とはいえ、当時の東京は暗闇だらけ、蒸し暑い夏を家中の扉を開け放し、縁先で、店の前で、路地裏で線香花火を炊いたことを。

年越しの時間が近づくとともに、外が賑やかになってきました。大きな音、小さな音、遠い音、近くの音、みながみな、色とりどりの花火を打ち上げているのでしょう。クリスマスイブや新暦の新年の時にはこれほど華やかなことはありませんでした。昔でしたら爆竹が辺り一面でしたが、死者も毎年出たことで今では禁じられています。台湾の農暦の正月はやはり格別です。

ここ台北の花火は西暦新年のカウントダウンが有名です。三百メートルの高さの超高層ビルが花火で姿を変える様は見事だと聞きましたが、見にはいきませんでした。花火は夏の風物詩、小さいころから夏の花火を見て育ってきました。ところが最近は大きなイベントには欠かせないのが花火。花火は俳句の季語から消えてしまったのでしょうか。

[ today's photos ] 大晦日の大通りの一角、正月飾りを売る店だけが華やか。あと数時間で年越しです。客の姿はありません。それにしても賑やかな飾り物です。長年台湾を行き来していますが、この賑やかさだけはいまだに馴染むことができません。

Thursday, January 22, 2009

[台北] 対聯


来週の月曜日、26日は農暦の正月、春節です。ところがここ台北の町なかは春節を迎える感がありません。店先を飾り物で賑う風景がありません。人はみな言います。不景気のせいだ、と。新聞では期待をこめた話は何もありません。むしろ明日はわが身という話題でいっぱいです。さびしい時勢なのです。

大陸では春節の里帰りの話題でいっぱいのようです。それも仕事がなくなったので早めに老郷(故郷)に戻るということだそうです。昨年までは、外国人の私の家も正月飾りでいっぱいになっていました。隣近所の玄関扉には「対聯」 [duìlián] という対句が張り出されていたものでした。

大陸の新聞から。今年卒業する女子大生の書いた対聯の記事がありました。大学の宿舎の自分の部屋の扉に張り出したもののようです。面白かったので紹介します。対聯はこの写真のように扉の左右に張るのが普通です。

右側(上聯)に
「找工作找好工作」 (仕事を探そう、いい仕事を探そー)
左側(下聯)は
「找老公找好老公」 (結婚相手を探そう、いい結婚相手をさがそー)
そして極め付けが扉の上部(横批)に
「哦耶」 [ɔyē] 掛け声のようです。英語でしたら "Yippee!" でしょうか。

昨年の卒業生のうち約100万人の学生がまだ就職できていないといいます。今年の新卒がおおよそ670万人、すごいですねこの数は。不景気、就職難、いい結婚相手がいない。悲痛な叫びがこの対聯に表れていました。しかしそれにしてもこの字は巧いですね。自分で書いたのか、それとも誰かに代筆してもらったのか。中国語圏では字が上手いか下手かはその人を値踏みする代物でした。もちろん日本もそうでした。文化大革命で教育が停滞したからでしょうか、最近字の上手な人を見たことがありませんでしたから、この対聯に書かれた字を見ていたく感動してしまいました。

(追記:090126)"サーチナ"(リンク切れ)によると数字は以下のとおり。 「・・・統計によると、2009年の大卒予定者は611万人で、2008年より9.3%増える見込みである。しかし、2008年に卒業した560万人の大学生のうち、150万人はまだ就職できていないということである。」

[ today's photos ] 对联 [duìlián] is Chinese New Year's poetry, antithetical couplet (written on scrolls, etc.) . When you write a couplet, pay attention to antithetic parallelism and antithesis.
I saw a very funny antithetical couplet on Chinese net-news today. This antithetical couplet was written by a woman student who will graduate soon.
"找工作找好工作" Look for a job to finish looking for a job.
"找老公找好老公" Look for a husband to finish looking for a husband.
"哦耶" Yippee!
It's verry "KAWAYI!".

Monday, January 19, 2009

[台北] 春節前の路地裏風景


あと一週間ほどで旧正月、農暦の春節がはじまります。厦門にいたときは、旧正月は飴と飾り物で家の中がにぎやかになります。元秘書は、子豚の飾り物を部屋の壁という壁に張りまくって帰省していきました。私はこの飾り物が大嫌い、小正月を迎える前に剥がしては元秘書の厳しい眼差しを受けていました。

この週末、私の住む裏町長屋は朝から賑やかな音が聞こえてきます。奥行きの狭い、不法に継ぎ足したバルコニーを行き来しながら、網戸をはずしては路地裏まで運び出しています。網戸の埃を洗い流すためです。ガラスについた塵を拭き取る光景も見受けます。バルコニーにいる姿を見つけては道行くおばさんが声をかけます。台湾語で「チャパーべ?」「チャパー」、「食事した?」「したよー」と。このやり取りは台湾人独特。正月前の風景。私は知りませんが、東京の下町ってこんな感じなのかなと思ったりします。

先週末は、以前蘇州のプロジェクトを一緒にこなした建築家の事務所の忘年会に参加させていただきました。八人もスタッフを抱えています。この不景気、どうですかとお聞きすると、役所の仕事がほとんどなので影響は少ないですよ、と話してくれました。困ったときのお役所ですね。

スカイプを立ち上げていたら、麗江の若造からチャットをせがんできました。彼も春節には家族水入らずで過ごすようです。紡績部門の幹部の方、それにお医者たちも戻ってきます。今は青島でパルプ工場の工事を見ているかつてのKTV仲間も戻ってきます。国外で働く台湾の人たちはみな、この時期だけは国に戻ります。戻らないのは私と元ボスと元々ボスと影のボスぐらいでしょうか。人さまざまな知らせが届きました。

[ today's photos ] 路地を抜けると小さな公園がある。その脇に小さな廟。仕事帰りにこの脇のスーパーに出かけると、若い人からお年寄りまで、神様へお供えを添え、拝み、そして添えた金色の紙幣を手前の専用焼却炉にくべていく。厦門も同じミン南の民俗を持ち合わせているが、廟自体が今では少ないからか、そんな光景は見受けられなかった。しかし商売人の多い町だけに、月に二度、店先にお供えを添え、金紙の紙幣を燃やしていた。

Sunday, January 18, 2009

[台北] Is-real


十年ほど前、ある南太平洋の小島にホテルを建てるのだけど手伝って欲しいといわれ台湾にやって来た。そして現場では英語のやり取りになるからみな英語を勉強しようではないか、と相成った。アタシが選んだ家庭教師は小生意気な若き英国人。あるとき、国際問題になっていたコソボ紛争について意見を交わす。ついでにイスラエル問題も語った。

若き小生意気な英国人、彼がイスラエル Israel と発音するとアタシにはどうしても Isreal と聞こえてしょうがない。問いただしても彼、別に気にもしない。しかし [Is real] か、うーん的を得ているなー、国の存在自体が問題な国だから、彼ら英国人は栄光をこめてそう発音しているのだ、と勝手に納得した。

*イスラエル、国連施設砲撃3人負傷…事務総長「強く抗議」
*「イスラエル軍、白旗掲げた住民に銃撃」人権団体の報告書
*「ガザ攻撃」白リン弾使用の非難受け、イスラエルが調査
*ガザ停戦要求決議を採択=日欧賛成、米国は反対-国連総会
*「オバマ熱」冷めるアラブ…ガザ攻撃に沈黙、失望誘う
*エジプトの人気歌手 オバマ氏をメッタ斬り

Is-real 、これが本当だ。

[ today's photos ] 禁煙条例後の町、ビルの出入り口は喫煙者で溢れかえっている。時間を合わせ、仲間連れ立って煙を吐き出している。アタシは気が引けて一人裏の駐車場に回る。その壁に向かって姿を隠すようにタバコを取り出す。この壁はアタシの「嘆きの壁」となった。

Sunday, January 11, 2009

[台北] 禁煙そして禁猥雑


アタシは愛煙家である。愛煙家と書くとなにやら雰囲気が出るが、今の世、まったくの嫌われ者のことである。厦門ではそんな心配はまったくなかった。ここ台北には多くの愛煙家がまだたくさんおり、オフィスで吸えない方々はビルの入り口まで出てきて煙を味わっている。小公園では、うら若き女性が厳しい顔つきでタバコをくわえている。彼女たちはきっとストレスが溜まっていたに違いない。そう思うことにしてそんな光景を眺めている。

今日11日、台湾での喫煙は原則禁止された。灰皿のないところでは一切禁止、公共の場、オフィス、そしてなんと飲み屋、バー、KTV、クラブでも許されない。守れなかった場合には個人は1万台湾元(日本円3万円弱)、お店は5万台湾元(日本円15万円弱)が課せられる。では灰皿はどこにあるのか、路上喫煙は許されているものの、吸殻のポイ捨てができなければ禁止と同様だ。

面白い条文は、二人のときの喫煙は許されるが一人以上加わると許されないというもの。三人寄ると駄目というのは何なのだろう。また家庭内での喫煙は家庭内で規則を決めることになる。行政はこれを機に台湾から喫煙者をなくしたいと話していた。

片や大陸。ここではポルノ関連、写真にビデオ、盗撮、淫乱な小説、事件の中での欲情をそそるようなニュース写真などをネット上から抹殺しようと政府が本腰を上げた。昨年の一時期、取り締まるぞ取り締まるぞと脅しをかけ、一部で反応があったものの名ばかりなものだった。今回は一寸違う。大陸の取り締まりは本格的になると一斉に、そして強力だ。アッという間に消え去ってしまった。(というものの、あちらのネット上には取締官も追いつけないほど無数のデーターが溢れている。しばらくはどこからか検索可能かもしれない。)

きっかけとして利用されたのが映画女優チャン・ツーイーの裸体写真。男と地中海のどこかのビーチで盗撮された写真がネットを駆け巡ったのを受けてだという。普通のニュース欄の記事をあたしはポチした。小さなボケボケのチャン・ツーイーの水着姿と露出が徐々に増えていく連続写真があった。胸の先が写っている写真があったものの、判別不能なほど解像度は低かったが、当局はこの件を受けて取り締まり強化の糸口としたらしい。(香港の女優たちが彼女の肉体をいたく評価していた。やせてはいるが引き締まっていた、見るに耐えられる、と。)

かつて厦門滞在時は、オイオイオイ、ここまで見せていいのかとか、事件現場での丸裸の女性の死体とか、飛び降り自殺の連続写真など、ごく当たり前に目にしてきた。慣れとは恐ろしいもので、これが戦争だったりするとどうなるのだろうと考えてしまった。

[ today's photos ] 禁煙条例を記した回覧文。しかしそう易々と喫煙者を無くすことは容易でないだろう。あと何年かかるのか。大陸ではタバコの印税収入を失いたくないために徹底できないでいるという話がある。その代わり偽煙草の取り締まりは時を追って厳しくなっている。

Thursday, January 1, 2009

[台北] 来る年


まずは今年が明るくなることを願う以外にない。大晦日の晩、カウントダウンの行事が近づくにつれ、外から大きい花火、小さい花火の音が聞こえてくるも、真っ暗な空が輝くことはなかった。そんな状況にぺこぺこ諂うジジイのアニメを載せるのはやめようと思うも、他にこれといったアイデアも浮かんでこない。

しかし諂いジジイのアニメを探すと思い出すのがこれを送ってくれた英国人の若造のこと。十年前になる。政治の世界で通訳を目指していた彼、台湾側からものを見ていた。中国と英国の関係は決して良好とはいえていない。ましてや当時、中国がこれほど政治的発言を世界に対して強めるとは夢にも思っていなかっただろう。今はいずこか。

とにもかくにも時間は動いていってしまう。今日元旦ももう残すところ5時間足らず。昨年から患った風邪のおかげで一日床で過ごしてしまった。 [burikineko]