Thursday, May 8, 2008

[廈門] 先のことなぞ・・・

二年前、アモイに初めて足を踏み入れた時、元ボスが昼飯に連れて行ってくれた。羊肉面(簡体字で麺は「面」と記す)。出汁の濃厚な味と羊の肉とがよくあった美味な麺であった。八元、路地裏の麺が三元、高級麺である。一年ほどたち、価格は十二元に跳ね上がった。そして今年、さらに三元上乗せされ、十五元にまで高騰した。悪いことに、だし汁は薄味になり、羊肉の風味が薄まっていた。なぜだ、と聞いてみると、客の好みに合わせたという。うそだろー、原価を下げただけだ。

この店に限らず、ここアモイでの物価高騰は激しい。一年で20%ほど上昇したという。それに伴い、公定給与も15%上乗せされた。麺店に限らず、価格を抑えたと思しき場面にしばし行き当たる。先日入った日本料理屋、天ぷらが使い古しの油味、口にできなかった。麗江の若造、腹が減っていたのか、気にもせずほおばっていたが、店を出るや腹を抑えていた。

企業業績も昨年に比して落ち込んでいるという。いや昨年が異常だったのだが、売上の横ばいと下降、一攫千金を目指し、都市へと流れ込む投資は激しい競争にさらされる。しかしここでの業績、粗利が50%というのは当たり前だそうで、なかには100%200%という不動産投資の話も聞く。店を開いても、半年で元が取れなければその事業は失敗、早々と他人に売り渡すことを考える。「金」が読めないアタシにはただただ驚くことばかりである。

学歴社会は歴然としている。それでも大学出がホワイトカラー職に就けるとは限らない。何しろ、一つの総合大学、学生数三万人というのは当たり前、毎年一万人近い社会人が生まれてくるのだから大変だ。受け口は限られている。半年一年の就職浪人もごろごろしている。就職捜しはネット、広大な中国、各地から面接にやってくる。そのための旅費もばかにできない。めでたく就職できても、ひと月働いた後に、ここおれには合わない、別を探す、といって去っていく者の多い。おかげで会社は四六時中人探しに追われている。元いた会社、この面接に幹部が時間を食われていた。「明日の午後はインタビューで・・・」と。その数を自慢する幹部も幹部である。原因がどこにあるかなぞ考えもしない。

大学出がそんな様、高卒は難関である。ほとんどが接客業に。馴染みの珈琲店で働く女性、大半は地方の農村出、小学校を出ただけのお嬢さんもいる。その子が、西洋人客の多いこの店で、巧みに英語で接客している姿を見るとちょっとうれしくなってしまう。大学入試資格を取ったものの、両親の離婚で大学をあきらめた子がいた。西洋人がこれほど出入りする店も珍しい、何か自分に役立つだろうと働き始めたという。しかし結局得るものがなさそうといって店を去ることにした。アタシの傍らにやってきて、携帯に自分の番号を打ち込み、何かあったら連絡ちょうだい、とこともなげに言ってのけた。彼女、ビジネスチャンスを広げたのだ。

誰もが先のことなぞわからずに動いている。今の中国、先を読もうにも読めない。あまりに動きが急激すぎるのだ。あと二三年はこんな状態が続くに違いない。ルールが定まっていない。だから今が面白い。アタシだって明日が読めずにアモイに留まっている。

[ MEMO: 日本から戻り、アタシは今ワンルームマンションを利用したホテルに滞在している。目の前に竣工したばかりの国際埠頭を見下ろし、口に糊のネタを作っている。一日中部屋に閉じこもっていると、どこかの台湾人みたいになってしまいそう。午後は馴染みの珈琲店に出向き作業をしている。長期滞在契約をすれば日本円で月三万円の部屋代。はじめからそうしていれば「金」に縁があったかもしれないと思ったりしている。読めないのだ、先のことが。 ]

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