Wednesday, October 31, 2007

[廈門・510天] 分手

日本で、バードウォッチングを続けているヒロシさんからメールが来た。

「・・・仕事大変でしょうが、仕事や人間関係以外のことも書いて下さい。・・・」

自分でもなぜこれほど人間関係にこだわって書いているのか、時に不可思議な気持ちになるのです。きっと、愚痴をこぼす相手がそばにいないからではないでしょうか。しばらく我慢してください。年寄りの愚痴は、長く、しつっこいのです。

・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・で、本文・・・

分手( fen4 shou3 )、別れる、恋人と別れる。別れを綴った歌のはなし。

ある日ある晩、クラブのステージで男性歌手が気持ちを込めて曲を披露している。店の女性がささやいた。「アタシの一番好きな曲!」。この一言に、すかさずボーイがわたしに声をかける。「彼に花輪をさし上げますか?」。いわゆるチップ。「OK」。「二つ?」(二百元)。あたし、「一つ」。

この曲、印象に残った。店の女性に曲名と歌手名を書いてもらう。早速家に戻り、インターネットで探しダウンロード。うーん、寂しい曲だ。とても寂しい。ジンとくる。店の女性にショートメールで伝える。「いー歌だなー」。彼女、「どこが?」。わたし、「心が痛む」。会話はそこで途切れた。

男性歌手はステージを下りると、私の席にやってきてお礼を述べた。わたしは店の女性に告げた。「次にきたときは、個室に彼を呼ぼう」。彼女、「歌のレッスンしてもらうの?」。おぼえる価値がある。しかしまだレッスンは受けていない。

会社の若い女性が私の席にやってきて告げた。「アタシ男友達と別れたー」。「オー可哀相だなー、この曲聞いて気持ちを入れ替えなさいな」。わたしは、彼女に、ダウンロードしたかの曲を、メモリーカードに入れ、手渡した。

翌日、彼女がやってきて恨めしそうに話した。「昨日は一晩中この曲聴いて涙流してた」。

この歌い手、酒場のナガシをしながら、テレビのオーディション番組に出ては落ち、落ちてはまた出てを繰り返し、ついにこの曲が認められ、デビューしたのだそうだ。ネクラそうである。名前を陳楚生、曲の名は「有没有人告訴你(あなた)」。阿久悠のいう、歌が空を飛ぶ曲だ。

そんなわけで、このところ、毎晩繰り返し繰り返し聴き入っている。いまではわたしの中で歌が飛びかっている。

[ 写真: 陳楚生。ビデオクリップからキャプチャーしたもの。百度という検索ネットで、日本からでも探せるのではないだろうか。 ]

Tuesday, October 30, 2007

[廈門・509天] 小事情

特殊な事情がありまして、幹部の多くが台湾人、スタッフのほとんどが中国人。もちろん比率は圧倒的に中国人が多い。台湾人に共通しているのが口うるさいこと。私の席のとなり、彼はまだ若い幹部。彼が中国人スタッフを呼び出し、仕事の内容にとやかく言っている。席が遠いので内容は聞き取れないが、どうやら一つのことについて長々と説教している様子。長い、なにしろ話が長い。

ある時、呼び出されたスタッフに一言声をかけてみた。「どう?仕事の内容は」、彼「万全です!」。苦笑するわたしを見るや、彼、態度一変する。突然にわたしの手を強く握りしめ、早口で語り始めた。「小事情( xiao3 shi4 qing2 )、小さな事なんです。こーんな小さな事をとやかく言うんです。それも何度も何度も」。わたしは幹部である。幹部に下手な答えはできない。それを、わたしの苦笑する様に、彼はわたしが事情を理解してくれているのだと、息せき切って話したのだ。

麗江の若造、ここ廈門に来ては麗江のスタッフに電話をかけまくっている。これがまた長い。そして苦情をたらたらと述べている。一度話せば済むだろうと思うも、彼もまた繰り返し繰り返し叱りつけている。そのくせ、こっちに来ると電話代がかかるかかると愚痴っている。当然だろうにと思うも、原因は自らにあるとは思ってもいない様子だ。

台湾人がそうなのか、中国人は違うのか、事情はわからないが、彼らは実によく話す。ああいうとこういう。話が激高して、手が震え出す者もいる。わたしは、彼と話すときはどこを押せばいいか、どの部分にさしかかったら話題を変えればいいか、なぞ理解して話をしている。ただ予期せぬ反応が返ってくることもある。女性技術者に、アナタの書いた図面はこれこれこうで、だからこうなって、結果こうするべきではないか、と説得しているうちに、彼女の目つきが変わってきたりして、ありゃまどうしましょう、なんて事もあったりした。

あれこれ愚痴らしきことを書き立てているものの、やはりわたしは東アジアの旅を、ひと一番楽しんでいるのかもしれない。

[ 写真: 今日もまだ写真ありません。日が短くなり、帳が下りたと思ったら、夜空に満月が見えていたのは、確か数日前だったか。ムーラン・ルージュだった。でも写真はありません。 ]

Monday, October 29, 2007

[廈門・508天] 先行き

この一ヶ月、明日はどうなるのだという状況を切り替えるに十分の時間だった。トップの、あらぬ言いぐさの犠牲になったり、緊縮財政へと、表向き動き始め、不可解な体制と、人員整理、この十月末までに何人もの方々が去っていくことになっている。気分は最低、仲間うちの顔つきも目つきも正常ではなくなっていた。

組織替えと共に、わたしの仕事量は激減、それを見ていた仲間の一人、「仕事なければさっさと去るけどなー」と聞こえるように陰口をたたく。その彼、今では本来の仕事がほとんどなく、やらなくてもいい他の人の仕事に手を出している。アナタの仕事ではないではないか、と話すと、ボソッと口を開く。「財務なんてできないんだよなー、大口だって叩けないし・・・」。去るべきはキミではないのかな。

麗江の若造が煙草を吸おうと外に引き出す。グジュグジュしているので「何?」。ボスがわたしの書いた農村計画の考察を高く評価した。全中国農民ナンジャラ大会に提出したかった、といっていた。なぜ早くオイラに見せてくれなかったのだ、と愚痴る。知るか、オマエがこの計画、我が社には厄介者だ、金をせびられるだけだ、ボスはそういっている、検討は適当にしといてくれ、といったではないか、と言い返した。みなボスの一言から抜けだせられないでいる。

あたしは好きな仕事ができれば、どんなものでもいいのであり、農村計画の考察は、あたしのライフワークの延長線上だったし、視点を開発会社の立場で見てみるとどうなるのか、という手法で分析しただけなのだ。ボスがこの論文のどの部分を評価したのかわからない。おそらく、誰も、”会社にとって”、という視点で物事を見ていなかったのだろうと思っている。日本ではごく当たり前のことが、ここではそれが見えてない。みな、”アタシと上の人間”、それに腐心している。「拍馬屁」 ( pai1 ma3 pi4 )、馬の尻に手を合わせる、おべっかだけが全てなのだ。

あたしが会社を去るという気配は消え去ったようだ。一気に仕事量が増え始めた。

[ 写真: 今日も写真ありません。池の鯉が総入れ替えし、小さな小さな鯉の群れを撮ろうかと思っていたものの、見とれて撮影を忘れてしまいました。 ]

Sunday, October 28, 2007

[廈門・507天] 持続させることの難しさ

ひと月以上の空白。去年の空白と違い、今年は別に特別な話があったわけではない。イヤ、むしろ小さいものの、いろいろな出来事に有り余るほどでくわしていた。夏の、くたびれたような暑さと、長引く喉の痛み、そして単調な毎日。この空白のひと月は、そんな状況をいかに消していくかが、もしかしたら頭の片隅にあったのかもしれない。それにしても一つのこと、たとえばblogを持続させることのなんと難しいことか・・・。

賄いオバサンを雇い、余計な生活感を軽減させたり、週末にはガッコの先生と茶館で雑談をしたり、時に大枚をはたいて夜の町へと出かけてみたり、日本・韓国・中国のはやり歌なぞダウンロードしては、仕事中イヤフォーンをかけて聞いてみたり・・・。何かと変化のある生活環境を積極的に考え、実行してみた。

この試みは成功したのかもしれない。ある時、二人の女性、昔の秘書とまもなく臨月の若き妊婦から、「若返ったみたい!」と、ほぼ同時期に言われた。変化が若返りを演出するとは考えても見なかった。ほー、適当な刺激って必要なんだ・・・。シンさんが、日本からのメールでさかんにわたしに伝えてきたことは、「運動したまえ!」。キミに不足しているのは運動だ。運動は試みなかったものの、カラオケで歌いまくるのも運動の一部だと思うことにした。

台湾人が言うように、オマエにはプレッシャーがない、と、自らの至らなさを棚に上げ、わたしを見つめるのを横目に、プレッシャーとは、自ら消し去ることが必要なのだ、たまには自前の金でカラオケぐらい行ってみろ、と言いたいほど、彼らの表情はどんどん暗くなってきている。人から受けるプレッシャーを傍らに置き去ることもできないでいるのだ。

ワォ、なんと愚痴の多いこと!

おっと、一言大事な話を言い忘れてしまった。新しい中国語のセンセが来週からやってくる。話はできるものの、発音がいい加減だったり、言い回しがめちゃくちゃだったりと、オマエは一年以上ここにいてなーんもマスターしていないではないか、という台湾人の言いぐさへの対応策だ。確かに自分でもそれがわかってきたので、カラオケ屋で新しい曲を披露するため、歌詞を正確に発音できるよう、日々訓練に励んでもいる。昔の秘書が四六時中諭してきたように、口元をはっきり変化させてしゃべることも始めた。

[ 写真: ありません。このところシャッター押していません。今後この件も積極的にやってみます。 ]