Tuesday, May 2, 2006

「停・看・聴」 束草(韓国)

一昔前のこと、日本国内にまだ韓流なぞという動きもなかったころのことです。政治的な思惑の絡み合った東アジアの状況なぞいい加減にしか理解していなかった私と友人が旅したのは、三十八度線に近い日本海(韓国流でいうとトンヘですか・・・)沿岸の漁港でした。町の名をソクチョ(束草)といいました。

この町には高い建物なぞ見あたらない、決して豊かな風景とは言い難いものでした。真冬にソウルから高速バスで降りたち、記憶に残ったのは、入り江の向かい側に渡る手引きの渡し船と、海岸線の鉄条網、町の規模に比べて多い飲み屋の数。入ったコーヒーショップで知った美麗な女性がコーヒーをデリバリーしてくれる特別サービス、折しも防空訓練が行われ、北との戦乱が始まれば、最前線に立たされる国境近くの町なのです。さすがに私たちにもこの緊張感は伝わってきました。それだけ独特な雰囲気のある小さな町でした。

当時の記事をこちらに掲載しています。左の写真は同行した写真家・北田英治氏撮影。右はドラマの中の一シーンから。

つい先日、韓流の師匠が送ってくれた韓国連続TVドラマ、「秋の童話」を見ました。「冬のソナタ」の制作と演出をしたユン・ソクホの最初の成功作品です。「冬のソナタ」ほどの完成度はありませんでしたが、見る人を泣かすつぼを心得た巧みさをみせていました。

この舞台がソクチョ(束草)でした。渡し船は変わらず残されていました。しかし両岸に高い建物の姿が見受けられ、海岸線に鉄条網も見あたりません。人のにぎわいも映し出されています。ドラマで、市場の中を歩きながら会話をする兄妹を手持ちカメラでとらえた、とても優れたシーンがありますが、ここにもにぎわいがうかがわれました。十五年間の様変わりをテレビドラマから教えられ、感慨深いものがありました。

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